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【代表パートナー林 特別寄稿】ベータ・ベンチャーキャピタル初の人材公募にあたって
HAYASHI Ryoheiこんにちは。ベータ・ベンチャーキャピタル代表の林です。今日は特別企画(?)として、VCファームとして弊社の人材募集記事を投稿させていただきます。
弊社では年内を目処に新メンバーの採用を考えています。これまでは会社の規模も小さかったことから、大々的な採用活動は行っておらず、リファラルやインターンからの登用のような形で良い人がいたら…というスタンスでしたが、これから僕たちも新しいフェーズに入っていくにあたり、今回は「公募」という形での採用活動を行ってみたいと思っています。
弊社にとって初めてのことでもあり、ベータの代表で創業者の林が、ベータ・ベンチャーキャピタルの現在地やこれからをお伝えしたうえで、今回の採用の意図をなるべく多くの方々にご理解いただければ幸いです。
何故やっているのか
メンバー
まず、現状のメンバーです。2017年にドーガンから分社化を行った段階では林・渡辺の2名だったチームが、現在はフルタイムメンバーが5名になりました。投資を担当するファンドマネージャーが4名 (40代x2名・30代・20代、 うち3名が投資経験10年超)、広報・IR担当が1名、その他社外アドバイザー等で構成されています。
年齢やバックグラウンド、興味のある分野もそれぞれ様々ではありますが、地域にこだわったミッションへの共感は強いメンバーが集まりました。
https://betavc.jp/team
ベータのミッション
ドーガングループ共通の思いとして、地域にリスクマネーの循環をもたらす「金融の地産地消」を掲げて活動をしてきました。それに加え、2017年の分社化(2019年にMBO)時に、「スタートアップ支援を通じて地域に雇用の多様性をもたらす」というテーマを盛り込んだミッションを掲げました。
https://dogan.vc/
創業以来、地域経済への貢献と投資リターンの両立という課題に取り組み、VC業界の中でも少し特殊なポジションにいることは自負しています。
地域に特化していることをリターンが出ない言い訳にはできないよね、という思いで投資活動を進めてきて、MBOからも5年が経ち、福岡のスタートアップエコシステムも2周めに差し掛かってきたいま、このあたりのミッション・ステートメント周りに関しても、新しいフェーズに向けて改めて考えてみよう、というプロジェクトも並行的に進めていたりもします。
何をやっているのか
続いて、僕たちの事業内容について、これまでの歩みなども含めて整理していきます。
① VCファンド運営事業
ベータ・ベンチャーキャピタルは現在、2012年設立の1号ファンド、2017年の2号ファンド、2020年の3号ファンドの運営を行っており、3号ファンドの新規投資もまもなく完了することに伴い、4号ファンドの立ち上げ準備に入ろうとしているところです。
ご存知の通り、VCのビジネスとはファンド設立から3-4年をかけて新規投資を行い、ファンド設立から10年間にわたって投資先支援・投資回収をおこなうというモデルなので、結果的に投資先が一定数に達するまでは少しずつ増えていく傾向にあります。特にベータの場合、地方の起業家を中心としたシード投資ということもあり、ファンドの運営期間を12年に設定して投資活動を行っていますので、この傾向は顕著です。
2023年現在、ベータの累計投資先は投資回収完了含め80社、投資未回収で支援を継続している投資先は56社となっています。図にまとめると下の様になります。
10-15社/年前後の新規投資を行い、3-5社/年の投資回収…というペースが継続していくことが想定され、今後立ち上げるファンドの規模やコンセプトにもよりますが、おそらく常時100社弱くらいの支援先を持った状態で事業を進めていくかたちになるのではないかと思います。
② スタートアップエコシステム貢献活動
2012年以降、僕たちが地方を起点にスタートアップ投資をおこなってきたなか、「起業家がそこにいる」状態は必ずしもデフォルトではありませんでした。在京プレイヤーと比較すると必ずしも多くはありませんが、直近では年間で200~250件の新規起業家との面談を行っており、着実にスタートアップエコシステムの輪は広がってきています。
また、イベントやインキュベーションオフィスの運営を通じて未起業層へアプローチするほか、行政や大学、九州各地の支援者の方々と連携した活動を行ったり、業界団体の活動に積極的に参画するなど、様々な手段で起業家が育ち集まるような環境を作り上げていくことに腐心してきました。
在京VCと比較するとよりこの特徴は顕著で、地域で良い投資を継続するには、エコシステムへの貢献を常に意識していく必要があると思っています。弊社パートナーの渡辺さんもこのように、エコシステムへの深い思いを語っています。
③ コーポレートベンチャリング支援
②と同様に、僕たちの直接的な収益事業ではないのですが、エコシステムの発展を起点に中長期的にファンドのパフォーマンス向上に繋げていく活動として、主にLP投資家企業を対象としたコーポレートベンチャリング支援を展開しています。
僕たちのファンドは、「金融の地産地消」という理念のもと地元企業を中心に累計29社からのご出資をいただいています。ご出資をいただく前後より投資家の皆さんとの対話を深めていくなか、ベータへの期待は投資リターンだけではなく、スタートアップ投資を通じた地域経済への貢献というところに力点を置いて評価をいただいているということも分かってきました。
さらには、投資家の皆さんも各自で、例えばスタートアップとの協業や直接出資など、自社にできるスタートアップ支援を行いたい、というご要望を多くいただいています。
既存経済とスタートアップとの距離をより縮めていくことは、スタートアップエコシステム活性化に欠かせない要素で、地方ならではのエコシステムのあり方を探求するという意味においても、僕たちにとってとても重要なチャレンジだと思っています。僕たちはこのような、スタートアップを支える資金循環をファンド・エコシステムと呼んでいて、その担い手としての活動にも注力しています。
具体的には、LP投資家に対してスタートアップの紹介等を行うだけでなく、スタートアップ投資のDDや契約周りを手助けしたり、社内会議などにもお邪魔してコーポレートベンチャリングの方向性を議論したり、ときには一緒にテレビ番組を作ったりイベントを共同開催したりなど、リソースの許す範囲でできる限りのことをやっています。
ベータ・ラボにもLPインタビューなど掲載しています。投資家インタビュー
今回の採用の目的
ここまでお読みいただき、ベータの目指しているところや現状をなんとなくご理解いただけましたでしょうか。今回の採用にあたっては、ベータの現在地など改めて確認しつつ、その意味合いについてこれまでになく結構しっかり議論してきました。その形跡にご興味ある方がもしいたら、こちらの議事録をご覧ください。
そもそも今回の採用の目的や大事にしたいテーマはなにか、というあたり、大きく3つの要素を中心に議論をしてきました。
1. 投資パフォーマンスを高める
ベータの事業領域① VCファンド運営事業 に関連する部分で、言うまでもなくファンドGPとしての最重要ミッションです。
議論を進める中で、今のベータの最大の課題は、4人のファンドマネージャーがここに全力投球できていないことではないかという思いに至りました。
創業以来、僕たち自身もスタートアップのような所帯感で、できる人ができることをやる、ということが習慣化されたことで、投資業務そのものではないタスクについても、投資担当メンバーを含めたチームみんなで取り組んできました。そのおかげで、チームワークは業界随一のレベルに達しているかもしれません(笑)が、対照的に投資メンバーがそれぞれ持っている強みを活かしきれていないのではないか、という課題が見えてきました。
その代表例として、投資のパフォーマンス向上に欠かせない、バックオフィス体制の拡充も急務と感じており、例えばファンドの決算時期などは社内全員でここに取り組んでいたりする状況です。このあたりは単純に人が増えれば解決するというより、業務の効率化や平準化、役割分担の明確化によって解決できる課題でもある可能性もあります。
また、これはVC業界全体の課題でもあるのですが、ファンドの大型化・LP投資家の多様化などにより、ポートフォリオ全体の管理や時価評価の仕組み導入など、求められる開示の質や量も今後さらに上がっていきます。
まとめますと、バックオフィス業務の効率化・ガバナンスの強化、このあたりを管理する、いわゆる「ファンドコントローラー」的な立場で関わってくれるメンバーの必要性を感じています。
2. ミッションの実現
ベータが投資のリターンだけでなく、スタートアップエコシステムやファンドエコシステムへの貢献を宿命付けられているというのは前述の通りです。
もちろん短期的にリターンを生み出していくことは重要で、ミッションのうちファンドの成功によって実現できる部分も大きいと思っているのですが、シンプルに「儲かれば良い」と割り切れる部分でもなく(前述の通り、投資リターンだけがファンドの目的ではないといったあたりは、LP投資家にもご理解いただいています)、それが中長期的に持続できるものになっていくことが重要で、自然的にスタートアップが育つ環境を作れるか という、より長期的な視座で取り組むべきテーマでもあると思います。
各投資担当者が、投資リターンにコミットしつつ、中長期的なエコシステムに貢献する、という両面で活動しているというのが現実で、僕自身もそうですが、これら2つのバランスを取ることを常に意識する必要があり、限られた時間のなかで共倒れになってしまわないかという危機感を常に抱いており、このあたりの課題を今回の採用で解決できると良いのかなと思っています。
3. 楽しく働く
実は個人的には、これがいちばん大事なことじゃないかなと思っています。
スタートアップエコシステムの資金供給者として、できる限り永続的でなければならないと思っています。もちろん歯を食いしばって戦うべき場面はあるかもしれませんが、楽しくないと長続きはしないというのは、僕の25年の社会人キャリアで得た大きな教訓でもあります。スタートアップが短期的な急成長を目指していくのとは対照的に、僕たちVCは黒子として長期的にエコシステムへの貢献をコミットし、自分たちもスタートアップと一緒に少しずつ成長していき、その成長を楽しんでいきたいと思っています。
ベータはまだまだ人数も少ないし、社歴も長くないのでカルチャーのようなものが確立できている状態ではないですが、楽しくチャレンジしていくというあたりに共感していただける方と一緒に働きたいです。繰り返しになりますが、VCファンドの運営という10年以上にまたがる事業を共に手掛けるという僕たちのビジネスの特性上、ここは大事なところだと思っています。
ベータの求める人物像
ここまで読んでいただいてありがとうございます。かなり長くなってしまいましたが、公開できる範囲で、ベータのこれまでの歩みやこれからのことを書いてみました。
ここから、今回の採用でベータがどんな人材を求めるのか、という具体的なところに踏み込んで行きたいと思うのですが、いわゆる求人票、Job Descripshonのような形式にまとめることはあえて避けたいと思います。
かわりに、ここまでお話してきた僕たちの経営課題を以下にまとめてみますので、この部分だったら貢献できそう、チャレンジしてみたいという方とたくさんお話をすることができたらと思っています。もちろん、フルタイムの採用に限定するつもりもありませんので、業務委託のようなかたちなど気軽にお声がけいただけると嬉しいです。
■ 新たな領域への投資
現状の10社/年ペースでのシード投資+αを継続していくという観点では、現状4名のファンドマネージャーがフルパワーを投入することでカバーできなくもないし、むしろ4人でやっていくという覚悟はあります。最大の課題は、フルパワーを投入できる状態にないという点だと考えています。
他方、例えばシリーズA以降のリード投資などの新たな投資ステージ、4人の経験値ではカバーできていない投資領域、もしくは未開拓の投資エリアなどへの挑戦については、新たに仲間に加わっていただける方がいれば大変心強いです。
■ ファンドコントローラー・業務プロセス改善
これまで半ば場当たり的に全員で対応してきたバックオフィス関連業務には大きな改善余地があると思います。
例えば業務をマニュアル化しタスクを洗い出して漏れがないかの管理、などはなかなか実現できていないという点は大きな課題で、ファンドマネージャーが投資にフルパワーを投入できていない一つの要因といえそうです。
(ちなみに、バックオフィス業務は記帳業務と外部監査を除いては内製対応しています)
■ IR・コーポレートベンチャリング
LPリレーションの強化という観点でも同様で、ベータを支えていただいている地元企業と支援先スタートアップとの事業共創可能性はとても強く感じているものの、現状ではファンドマネージャーの余力の範囲がそのキャップになっています。
投資家とより緊密な関係性を構築し、コーポレートベンチャリングに貢献すること、九州ならではのスタートアップエコシステムを作っていけるのではないかと思っています。
■ 広報
情報発信という点についても、起業家や潜在起業家層へのリーチなどまだまだやるべきことがあると感じています。
■ スタートアップエコシステム貢献
短期的なファンドパフォーマンスの最大化と長期的なエコシステムへの貢献は、ある面で二律背反の関係性で経営的にはリソースの配分が難しい部分ですが、このあたりのリソースを補強して戦略的なリソース配分を行っていきたいと考えています。
全員野球から、サッカーくらいのざっくりとしたポジション分担ができるようになるといいのかなと思っています。
ご連絡お待ちしてます… !
ベータはまだまだ小さなチームではありますが、スタートアップ愛・地域愛を共通項にしつつ、多様なバックグラウンドや得意領域をもつチームに成長していきたいと強く思っています。
この機会に、ご関心をお持ちいただけるなるべくたくさんの方々との接点を持つことができたら幸いです。
こちらに簡単なフォームを用意しましたので、ベータに貢献できそうなことや提案したいことなどを添えてご連絡いただけたらと思います!!
すでにベータメンバーと接点をお持ちいただいている方もいらっしゃるかと思いますので、直接メンバーにご連絡とかでも全然問題ありません!
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