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【代表パートナー林】社名変更について改めて綴ってみる
HAYASHI Ryohei弊社は、2024年4月より、ベータ・ベンチャーキャピタル株式会社として新たな局面を迎えました。僕自身も、ようやく社名を言い間違えることも減ってきて、皆さんにも少しずつ新しい社名にも馴染んでただけてきたかなというところです。Webサイトについても、段階的に新サイトに移行をしてきたものが、いよいよ本格移行のフェーズに入りまして、3年ほど前から続けてきた、オウンドメディア(旧称 ドーガンベータラボ)もこの通り新サイトに完全移行いたしました。
新サイトへの移行を記念して、社名変更の背景やその意味みたいな部分を、徒然なるままに書いてみました。このタイミングでどれくらいの需要があるのかは分かりませんが、せっかくなので共有させてもらえたらと思います。
なぜ社名変更したのか
弊社のスタートアップ支援の歴史は、2006年の0号ファンド設立にさかのぼります。10億円のファンドレイズとともに、地域特化型VCの旗を揚げ、九州におけるベンチャーファイナンスやIPOの活性化に先鞭をつける意気込みでした。まだ「スタートアップ」という言葉も一般的ではなく、優秀な人材は大企業や官公庁に集まり、そういったキャリアを捨ててまで起業家を志すような風潮はほとんどありませんでしたが、地域で新しい雇用を創出していかないと、東京との格差は広がるばかりではないか、という危機感があったと記憶してます。
ただ、残念ながらこのチャレンジは成功とはほど遠い結果となりました。同年に起こったライブドアショックにより、IPOマーケットは大きく冷え込み、さらに2008年のリーマンショックはそれに追い打ちを掛け、数年にわたって九州からIPOが出ない、という状況に陥りました。2000年代初頭から、僕たち以外のプレーヤーも九州でのベンチャー投資活性化を企図して立ち上がったファンドもありましたが、気が付けば姿を見かけなくなり、在京のVCファームの福岡拠点も相次いで撤退していきました。
転機となったのは、1号ファンドを設立し、同時にコワーキングスペース「OnRAMP」を開業した2012年です。このたび共同代表に就任した渡辺さんがインターンとして福岡に移住してきたのもこの頃で、彼とシリコンバレーを訪問し、投資家・起業家がオープンな場所に集い、そこから多数のユニコーンが生まれ、また彼らが次の世代の起業家を育てるというベンチャーエコシステムを目の当たりにしました。福岡市のスタートアップ都市宣言もこの年です。福岡の街に「起業」という文化が生まれ、またこれに追随する動きが九州各地でみられるようになったのもこの頃です。その後、2017年の2号ファンド設立のタイミングで、ドーガンから分社化、その後2019年に林・渡辺によるMBOを実施しました。
分社化の時期に渡辺さんと2人で話し、掲げたミッションが「雇用の多様性をつくる」でした。僕は福岡、渡辺さんは静岡で生まれ育ち、世代こそ違えど、地方にベンチャーキャピタルが根付くことの意義深さについてお互い何となく感じていて、その共通項ってなんだろう、と議論を重ねる過程でたどり着いたのが、「雇用の多様性」でした。自然豊かで住みよい、生活環境資本の充実した地域に、たくさんの雇用の選択肢を生み出すことができれば、めちゃくちゃ豊かで誰もが住みたくなる地域が生まれるんじゃないか、九州をはじめ、地方にはそういうポテンシャルがあるんじゃないかと。
社名変更までのお話が長くなってしまいましたが、分社化から今回の社名変更までのドーガン・ベータとしての7年間(2017-2023)はまさに「雇用の多様性」への貢献を念頭に活動してきました。2020年以降は、HYUGA PRIMARY CAREやQPS研究所など、支援先のIPOなどにも恵まれ、スタートアップが地域に雇用の多様性を生み出す、ということが少しずつ実証されてきた時期だったのではないかと思います。地域特化型の独立系VCが、地域エコシステム活性化・雇用の多様性に貢献できるということを示すことができた今、次の高みをめざすべく、改めてミッションの再定義を行いたい、というのがこのプロジェクトの出発点でした。
ミッションの再定義にあたり、中村さん(五島列島なかむらただし社)と工藤さん(BRANDFARM)のおふたりにご相談したのが2023年の夏頃だったかと思います。定期的なディスカッションでの思いもよらぬ角度からの斬りこみや、時には支援先の起業家やLP投資家のお話を聞きに行ってもらったりすることを通して、「βとしてやりたいのはこういうことですよね」と新しい視座を見事に言語化していただいて、僕はもちろん、チーム全員の目がキラッと輝いた瞬間が忘れられません。言葉の力ってすごいんだなと。そうして出来上がったのがこちらです。
結果に関わらず多様なチャレンジが称賛されるような「風土」をみんなでつくっていきたい。そのために僕たちはどうあるべきか、を考えたときに、お金だけでないさまざまな「資本」の循環を担っていきたい、という思いに至り、ミッションステートメントと一緒に社名も変えちゃおう!という気持ちが誰からともなく湧きあがり、社名変更にも踏み込んだというのが今回のリブランディングの実際のところです。
ベータ に込めた意味
ここからは、個人的な思いも含め、社名とステートメントの行間に込めた思いをご紹介したいと思います。
まずは、ベータ。例えばβ版、のような使われ方があるように、僕たちは、βを「未知なるもの」「わからないもの」と解釈しました。
また、定期的にVC・スタートアップ界隈のSNSで議論になるテーマとして「アルファ・ベータ論」みたいなものがあると思います。金融の世界では、これらはいずれもリターンの源泉なるものとされ、ベータは市場からもたらされるリターン、アルファは銘柄選別などファンドマネージャーの技量によるリターンと理解されています。一般論として、資金運用を生業とする者として「アルファ」を生み出すべきという本質論は全くその通りです。
では僕たちはなぜ、社名に掲げるほど「ベータ」にこだわっているのか。それは、僕たちの歴史と深い関係があります。2006年の0号ファンドから、地方においてベンチャー投資が成立することを証明したくて活動を続けてきました。ライブドア・リーマンなど厳しい局面があり、その道のりは一筋縄では行きませんでしたが、僕たちには九州におけるベンチャー投資という領域において、市場のうねりに乗っかってリターンを上げるのではなく、自らがその波を作り出して結果を出す、すなわち「ベータ」を創出してきたという自負が少なからずあります。これが、ベータという社名に込めた一つの背景です。
もちろん、その活動もまだまだ道半ばで、在京のVCとの標準的なパフォーマンスと弊社のそれを比較しても、感覚値ベースでもまだあと数%足りていないという実感を持っています。これは、地域に投資をする動機を特段持っていない一般的な金融投資家であれば、間違いなく僕たちは投資対象には選ばない、ということを意味します。これは、中央と地方のベータの差分に起因していて、これを埋めに行くことが僕たちの現在の最大のモチベーションです。皆さんが投資家だったとして、一般的なVCと、地方に根ざして投資を行い 地域の経済格差を解消しているVCと、もしリターンが同等であれば、どっちに投資したいですか?遠くない未来、そんな世界線にたどり着けたらと思っています。
ベンチャーキャピタル に込めた意味
僕たちが0号ファンドを立ち上げた2006年ごろ、まだ「スタートアップ」という言葉はまだ存在していなかったような気がします。そこから十数年、福岡市のスタートアップ都市宣言、国のスタートアップ育成5か年計画など、気が付けばベンチャーよりもこっちが主流になってきました。
ただ個人的には、スタートアップもいいけど、ベンチャーという語感が大好きです。うまく表現できないけど、終わりなき冒険に挑んでいる感覚みたいなところでしょうか。「ベンチャーキャピタル」というのも同じで、そんなワクワクする冒険と、金融というとてもお堅いビジネスとの絶妙なコントラストが素敵な言葉じゃないかなと思います。個人的な趣味で、という話ではないんですが、チームメンバーでもそういう話をして、社名には敢えて「ベンチャーキャピタル」を入れよう、という話になりました(余談ですが、〇〇ベンチャーズ、〇〇キャピタルとかは多いですが、ベンチャーキャピタル、をまるごと社名に入れているVCは意外と少ないです)。
また、社名にベンチャーキャピタルを冠する、という意思決定をした瞬間、”自分たちがやりたいのは、本当の意味でのベンチャーキャピタルなんだ” という気持ちになりました。これまで、外部の人に僕たちの仕事について説明するとき、「地域に特化してベンチャーキャピタルの手法を使って投資をしてます」っていう感じで、なんというかVCの亜流ぽいニュアンスを含ませて自己紹介していたような気がするけど、これからはちょっと違う感じになりそうかなと。
おまけ
スローガン・ステートメント策定に始まり、ロゴタイプを決める、プレスリリース、出資者や投資先への周知、Webサイト構築、メンバーの写真撮影、名刺をつくる、オフィスの看板をつくる、社名変更登記、口座名義の変更などなど、限られたタイムラインで漏れなくタスクをこなす、という緊張感あふれる日々をすごすなか、その緊張感とは対極にありそうなかわいらしいキャラクターが生まれました。コイツの説明も少しさせていただきます。
キャピタル(Capital)という英単語には、「資本」の他に「首都」とかの意味もありますよね。これはどうやら、「頭」を表すラテン語が語源になっているそうです。同じ語源を持つものとして、頭に被る「帽子(Cap)」があるそうで、そこにヒントを得て生まれたのが、βの帽子を被って冒険に出かける、誰でも4画で描ける彼/彼女です。ちなみに、正式な名前はありません。帽子をかぶって冒険に出かける起業家、未知なるもの(β)の中にある光を信じる僕たち支援者、いろんな解釈があると思います。皆さん好きなように名前を付けて親しんでいただけたら、彼/彼女も喜ぶと思います。
最後に写真を1枚。2023年の暮れに支援先の皆さんとひっそり開催した「感謝の集い」です。今回のコラムとあまり脈絡がないような気もしますが、リブランディングのあれやこれやでシェアするタイミングを逃してしまっておりました。QPSの大西さん・市來さんの上場お祝いをして、せっかくなのでIPOプロセスのあれやこれを色々お伺いして、おいしいご飯を食べたあと、会場をスナックスザンヌに移して深夜まで語り合いました。
ベータ・ベンチャーキャピタルのチーム一同、素晴らしい冒険家の皆さんと、苦楽をともにできることが心から楽しいなと思えた一夜でした。これからも、よろしくお願いします。
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